送迎車の朝
この本について
九歳の少女と十九歳の大学生。「誘拐事件」として報道された二か月間の真相を知っているのは、本人たちだけだった。 家に居場所のなかった更紗は、公園で出会った文の家についていき、そこで穏やかな時間を過ごす。だが世間から見れば、それは幼女誘拐にほかならない。文は逮捕され、更紗は「被害者」として生きることになる。十五年後、ふたりは偶然再会する。 善意で押しつけられる「かわいそう」が、当人をどれだけ追い詰めるか。この小説は、事件そのものより、その後の世間の目を書いている。更紗の恋人も、職場の人も、悪い人ではない。悪くない人たちの善意が、いちばん重い。 二〇二〇年の本屋大賞。読み終わると、ニュースで見た「事件」の当事者のことを、少しだけ違う目で考えるようになる。
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