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52ヘルツのクジラたち

52ヘルツのクジラたち

町田そのこ · 中央公論新社(中公文庫) · 2023年

他の鯨には聞こえない周波数で鳴く鯨がいる。誰にも届かない声を持ったまま大人になった女性が、海辺の町でひとりの少年と出会う話。 主人公の貴瑚は、家族に人生を使い潰されたあと、東京を離れて大分の小さな町に移り住む。周りからは「訳あり」と見られ、…

そして、バトンは渡された

そして、バトンは渡された

瀬尾まいこ · 文藝春秋(文春文庫) · 2020年

父親が三回、母親が二回変わった。それなのに、いつも誰かに大事にされてきた少女の高校三年間。 主人公の優子は、血のつながらない親のあいだを、事情があってリレーのように渡されてきた。今いっしょに暮らしているのは、二十歳ほど年上の「森宮さん」。料…

博士の愛した数式

博士の愛した数式

小川洋子 · 新潮社(新潮文庫) · 2005年

記憶が八十分しかもたない老数学者と、その家に通う家政婦、そして彼女の十歳の息子。三人で過ごした一年ほどの話。 博士は交通事故の後遺症で、新しい記憶を八十分以上保てない。背広のあちこちにメモをクリップで留めて、自分の状態を毎朝読み直す。家政婦…

余命10年

余命10年

小坂流加 · 文芸社(文芸社文庫NEO) · 2017年

二十歳で、治らない病気だとわかった。余命はおよそ十年。それなら恋はしない、と決めた女性の話。 主人公の茉莉は、肺の難病で入院した病室から物語を始める。退院後は、残りの時間を穏やかに使うために、人と深く関わらない暮らしを選ぶ。ところが同窓会で…

火花

火花

又吉直樹 · 文藝春秋(文春文庫) · 2017年

売れない若手芸人が、熱海の花火大会で出会った先輩に弟子入りを申し出るところから始まる、十年分の話。 語り手の徳永は「スパークス」というコンビの一人。先輩の神谷は、面白いことにしか興味がなく、面白くないものを許さない。徳永は神谷に「伝記を書け…

舟を編む

舟を編む

三浦しをん · 光文社(光文社文庫) · 2015年

新しい国語辞典『大渡海』を作る。完成まで十五年かかる仕事に、営業部から引き抜かれた青年がのめり込んでいく話。 主人公の馬締光也は、人と話すのが苦手で、言葉を選ぶのに時間がかかる。その性質が、辞書を編む仕事にはちょうどよかった。用例採集カード…

何者

何者

朝井リョウ · 新潮社(新潮文庫) · 2015年

就職活動中の大学生五人が、ひとりの部屋に集まって情報を交換し合う。その裏で、それぞれが別の顔を持っている話。 語り手の拓人は演劇をやめて就活を始めた。同居人の光太郎、留学帰りの瑞月、意識の高い理香とその彼氏。互いの進み具合を気にしながら、表…

傲慢と善良

傲慢と善良

辻村深月 · 朝日新聞出版(朝日文庫) · 2022年

結婚を決めた相手が、突然いなくなった。残された男が、婚約者の過去をたどっていくうちに、自分のことも知ってしまう話。 架は三十九歳。婚活で出会った真実と婚約したが、真実は「ストーカーに追われている」と言い残して姿を消す。架は真実の実家や元の職…

わたしを離さないで

わたしを離さないで

カズオ・イシグロ(土屋政雄 訳) · 早川書房(ハヤカワepi文庫) · 2008年

英国の寄宿学校で育った三人の、子ども時代から大人になるまでの記憶。語り手は「介護人」として働く女性、キャシー。 ヘールシャムという学校は、外の世界から切り離されていて、生徒たちは絵を描き、詩を書き、健康を管理される。何のためにそうしているの…

蜜蜂と遠雷(上)

蜜蜂と遠雷(上)

恩田陸 · 幻冬舎(幻冬舎文庫) · 2019年

国際ピアノコンクールに集まった四人の若者を、予選から本選まで追いかける話。上下巻で、ひとつのコンクールの二週間ほどが描かれる。 養蜂家の父と旅をしながら育ち、家にピアノを持たない少年・風間塵。母を亡くしてから舞台に立てなくなった元天才少女・…

一瞬の風になれ 第一部

一瞬の風になれ 第一部

佐藤多佳子 · 講談社(講談社文庫) · 2009年

サッカーをやめた高校一年生が、陸上部で短距離を走り始める。三年間を三部作で描く、その第一部。 主人公の新二は、天才肌の兄と同じサッカー部にいたが、自分の限界を知ってやめた。親友の連に誘われて陸上部に入り、初めて百メートルを全力で走る。何も考…

長いお別れ

長いお別れ

中島京子 · 文藝春秋(文春文庫) · 2018年

元中学校長の父が、認知症になった。家族がその十年を、それぞれの場所から見つめる連作小説。 父の昇平は、少しずつ言葉を失い、家族の名前を間違え、それでも礼儀正しい。母は在宅で介護を続け、三人の娘はそれぞれ結婚や仕事を抱えながら、実家との距離を…

西の魔女が死んだ

西の魔女が死んだ

梨木香歩 · 新潮社(新潮文庫) · 2001年

中学に通えなくなった少女が、田舎に住む祖母のもとで一か月ほど暮らす。祖母は英国人で、自分のことを魔女だと言う。 まいは学校の人間関係に疲れて、母親の勧めで「西の魔女」の家に預けられる。そこでの日々は、野いちごを摘み、シーツを干し、鶏の世話を…

ツナグ

ツナグ

辻村深月 · 新潮社(新潮文庫) · 2012年

死んだ人に、一度だけ会わせてくれる使者がいる。その使者を通じて再会を果たす人たちの、五つの話。 再会には決まりがある。生きている側も死んだ側も、使えるのは一生に一度。会えるのは満月の夜に一晩だけ。会いたい相手が承諾しなければ会えない。この決…

苦役列車

苦役列車

西村賢太 · 新潮社(新潮文庫) · 2012年

十九歳、中卒、日雇いの港湾労働。家賃を滞納し、酒を飲み、明日のことは考えない。そういう若者の、何も起きない日々の話。 主人公の貫多は、父親が性犯罪で捕まったことをきっかけに家族が離散し、中学を出てからひとりで生きている。冷凍倉庫で荷を運ぶ仕…

永遠の0

永遠の0

百田尚樹 · 講談社(講談社文庫) · 2009年

特攻で死んだ祖父のことを、孫が調べ始める。戦友たちを訪ね歩くうちに見えてきたのは、「臆病者」と呼ばれた一人のパイロットの姿だった。 司法試験に落ちて腐っていた健太郎は、姉に頼まれて、血のつながった祖父・宮部久蔵の足跡をたどる。海軍の戦闘機乗…

黒い雨

黒い雨

井伏鱒二 · 新潮社(新潮文庫) · 2003年

広島に原爆が落ちた日から数日間の日記を、被爆した本人が数年後に清書していく。姪の縁談のために、彼女が被爆していないことを証明しようとして。 閑間重松は、姪の矢須子に「原爆症」の噂が立って縁談が流れるのを防ぐため、自分の被爆日記を書き写し始め…

コンビニ人間

コンビニ人間

村田沙耶香 · 文藝春秋(文春文庫) · 2018年

三十六歳、独身、コンビニでアルバイトを十八年。それで何が悪いのか、本人にはわからない。周りの人はわかっているつもりでいる。 古倉恵子は子どもの頃から「普通」がわからず、周りを困らせてきた。大学時代に始めたコンビニの仕事だけが、マニュアルのお…

流浪の月

流浪の月

凪良ゆう · 東京創元社(創元文芸文庫) · 2022年

九歳の少女と十九歳の大学生。「誘拐事件」として報道された二か月間の真相を知っているのは、本人たちだけだった。 家に居場所のなかった更紗は、公園で出会った文の家についていき、そこで穏やかな時間を過ごす。だが世間から見れば、それは幼女誘拐にほか…

深夜特急1 香港・マカオ

深夜特急1 香港・マカオ

沢木耕太郎 · 新潮社(新潮文庫) · 2020年

二十六歳の「私」が、インドのデリーからロンドンまで、乗合バスだけで行こうと決める。第一巻は、その前に立ち寄った香港とマカオ。 仕事を全部断って、わずかな金を持って日本を出た。最初に着いた香港で、安宿の雑居ビルに泊まり、路地の屋台で食べ、夜の…

手紙

手紙

東野圭吾 · 文藝春秋(文春文庫) · 2006年

兄が強盗殺人で捕まった。弟のもとに、刑務所から毎月手紙が届く。その手紙のせいで、弟の人生から居場所が消えていく話。 剛志は、弟の直貴の学費を工面しようとして空き巣に入り、人を殺した。直貴は進学をあきらめ、働きながら音楽をやり、恋をする。その…

しゃぼん玉

しゃぼん玉

乃南アサ · 新潮社(新潮文庫) · 2008年

通り魔とひったくりを繰り返してきた若い男が、逃げた先の山村で、ひとりの老婆に拾われる。 伊豆見翔人は、二十歳そこそこで、人を傷つけることに何の感情も持てない。金がなくなればまた奪えばいい。そう思って逃走を続けているうちに、宮崎の山あいの集落…

夜と霧 新版

夜と霧 新版

ヴィクトール・E・フランクル(池田香代子 訳) · みすず書房 · 2002年

ナチスの強制収容所に送られた精神科医が、そこで人が何を考え、何にすがり、何で壊れたかを記録した本。 著者フランクルは、ウィーンの医師として収容され、家族のほとんどを失いながら生き延びた。この本は、収容所の残虐さを告発する本ではない。極限状態…

塩狩峠

塩狩峠

三浦綾子 · 新潮社(新潮文庫) · 2005年

明治の終わり、北海道の塩狩峠で、暴走する客車を自分の体で止めた鉄道職員がいた。実在の人物をもとにした小説。 主人公の永野信夫は、東京で生まれ、キリスト教を嫌う祖母に育てられる。家には隠された事情があり、それを知った信夫は、人を信じることと神…