ホームの反対側
この本について
他の鯨には聞こえない周波数で鳴く鯨がいる。誰にも届かない声を持ったまま大人になった女性が、海辺の町でひとりの少年と出会う話。 主人公の貴瑚は、家族に人生を使い潰されたあと、東京を離れて大分の小さな町に移り住む。周りからは「訳あり」と見られ、本人もそれを否定しない。そこで、母親から「ムシ」と呼ばれ、言葉を発しない少年に会う。貴瑚はその子の中に、かつての自分を見つけてしまう。 読みどころは、助ける側と助けられる側が固定されていないところ。貴瑚を救った人がいて、貴瑚が救おうとする子がいて、その連なりの途中で貴瑚自身も何度も壊れる。虐待、家族の支配、性の話も出てくるので軽い本ではないが、文章は平明で、章の切れ目ごとに息がつける。 2021年の本屋大賞。読み終えてから、題名の意味がもう一度重くなる。
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